「やんばるクイナ」に出会う旅   (続・中篇:広域基幹林道大国線)「ヤンバルクイナ」
 とうとう「やんばる」の本丸、広域基幹林道大国線に足を踏み入れることになりました。林道に入ると、まもなく携帯の電波は圏外となり、世間から完全に切り離された状態です。ここからは、車が路肩に脱輪したとしてもロードサービスも呼べず、自分でジャッキアップするしかありません。


広域基幹林道大国線



やんばるトカゲ
 林道をゆっくり走ること約10分、道路に覆い被さる鬱蒼(うっそう)とした樹木が行く先の期待と不安を掻き立てます。しんとした道路の路肩に車を寄せて、ゆっくり降りてみれば、さっそく「やんばるトカゲ」発見! そ〜っと近寄って見れば、どこかで見覚えのある緑色のトカゲです。

 緑色といえば「グリーンアノール」、マングースにも引けを取らない生態系バランスを脅(おびや)かす外来種のトカゲです。東京都小笠原では、在来種の昆虫が全滅寸前まで追い込まれました。 沖縄では那覇空港周辺に目撃情報が多いものの、やんばる地方では聞いたことがありません。 これはひょっとしたら一大事、さっそく環境省那覇自然環境事務所にメールで報告しなければいけません。

 後日、野生生物課 外来生物対策担当の職員から、丁寧な返信メールが帰ってきました。この黒木メイサにも似たスレンダーな体型と長い尾は、アオカナヘビという在来種のトカゲだそうです。昔はどこにでもいたトカゲのようですが、今はなかなか見られなくなってきたということです。 一方、アメリカ生まれのグリーンアノールは、目もとにブルーのアイシャドーをしていて、純粋なやんばる育ちとはその辺でも区別ができるということです。いづれにしてもグリーンアノールでなかったことは幸いでした。

 謝名城(じゃなぐすく)林道との分岐では、初めて人に出会いました。ここ「やんばる」では人も希少種です。ここに来るまで、キジバトには13羽に遭遇しました。そして多くはペアのキジバトでした。 鳥類はきわめて家族関係がしっかりしています。魚も家族のきずなが強く、チョウチョウウオはいつもペアで泳いでいますし、慶良間の海でシュノーケリングをすれば、フエフキダイの仲間もほとんど2匹で行動しているのが分かります。家族のきずなが最近あやしくなっているのが哺乳類(ヒト科ヒト属)だと思います。


ホントウアカヒゲ
 目の前を、オレンジ色のスズメに似た小鳥が3羽横切って行きました。「ああっ!」と云う間の出来ごとです。これは「ホントウアカヒゲ」に違いありません。 ホントウアカヒゲも、 国指定天然記念物に指定された国内希少野生動植物種で、簡単に出会える鳥ではありません。愛用のオリンパスコンパクトカメラでは撮影が多少困難であったため、他人のWebサイトでその姿を紹介します。 実をいうと「コマドリ」も同じような色と形で、今となってはどちらだったか分かりません。アカヒゲ(学名:Erithacus  komadori)とコマドリ(学名:Erithacus  akahige)では、登録時に学名を取り違えるぐらい似た鳥なので、ここは気持ちよく天然記念物のアカヒゲに出会ったことにしておきましょう。

 林道を走って17km。比地(ひじ)大滝で有名な比地川は、広域基幹林道大国線のちょうど中間付近を流れています。比地川を渡る少し手前に湧き水があって、ここの湧水は甘い水として好評です。

 空になったペットボトルに湧水を詰めながら休んでいると、赤い車の外人さんが道を尋ねてきました。比地大滝へ行く分岐点を見落として、山道に迷い込んでしまったのだと思います。 「Hiji fall?」(比地大滝?)。「This way!」(こっち!)。 だいたい英会話なんて、単語の羅列と度胸があれば事足ります。中学校で学んだ関係代名詞(which)なんて、役に立った試しがありません。 と、強がりを云いながら、内心では「ちむどんどん」(心臓ドキドキ)でした。



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