「やんばるクイナ」に出会う旅   (続・前篇:マングース北上防止柵)「ヤンバルクイナ」
 東村ではパイナップルの畑を随所で見かけました。「花と水とパインの村」と名乗るだけあり、パイナップルの生産は盛んな様です。日本のパイナップルは99%以上が沖縄で生産されていて、6月から8月頃に出回ります。しかし、国内市場のほとんど(95%)はフィリピン産で占められ、沖縄のパイナップルもレッドデータブック入り(絶滅危惧)しておかしくない状況です。


東村役場
 東村の村役場を覗くと、建物の豪華さに驚かされます。3月につつじ祭りが開催される「村民の森」の「つつじエコパーク」にしても豪勢で、相当額の建設費と維持費用が費やされていると思われます。不思議に思い地図を開いて見てみれば、東村の北側にはアメリカ海兵隊の広大な北部練習場が広がり、さらに高江地区では、オスプレー配備のためのヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)建設工事まで始まっていました。オスプレーは、普天間基地への配備を巡って大きな話題となっている軍用機で、村営設備の豪華さに納得です。

 高江地区といえば今年5月18日、琉球新報、沖縄タイムズ各社によりヤンバルクイナ繁殖の南限として報道された地域です。この地域では、米軍も一緒になってマングース捕獲事業に参画しているということで、東村の経済と自然を守ってきたのは皮肉にも米軍であったとも云えるようです。マングースにしてみても、まさか米軍まで敵に回すとは思わなかったと思います。

 東村役場の背後にある平良湾から西海岸の塩谷湾を結んだ線は、S(塩谷)−T(平良)ラインと呼ばれ、マングースの北上を阻止する防衛ラインとなっています。1990年台に入り、この防衛線が突破されたという報告がありました。県と国は2006年から、このS−Tラインにマングース北上防止柵を建設し、南北分断策に打って出ています。 まさに北緯26度線をはさむ攻防が、日夜を問わず繰り広げられています。


マングース北上防止柵
 マングース北上防止柵は、東村役場から「村民の森」を越えて福地ダム方面に向かうと見つかります。この柵は、福地ダムから塩屋湾まで続いていて、柵には希少動物の写真と小学生の書いたマングース撲滅の絵が延々と展示されています。 もはや、ここまでくると洗脳に近いものを感じます。小学生の子供たちまで敵に回した形のマングースですが、本当に悪いのは沖縄にマングースを持ち込んだ東京大学の先生と、それに同調した専門家の先生たちです。

 マングース北上防止柵を辿っていくと、やんばるの豊かな水を満々と湛(たた)えた大きな湖にやってきました。「ぶながや湖」と名付けられたこの湖は、大保(たいほ)ダムによって堰き止められたダム湖です。 湖の名の由来である「ブナガヤ」は、川底に住む妖怪で、最近では大宜味村のマスコットキャラクターも務めています。 昔は沖縄各地にいたのだそうですが、急激な近代化と乱開発に耐えきれず、今では大宜味村にしかいないのだそうです。

 広域基幹林道大国線の入口がこの近くに有る筈です。広域基幹林道大国線といえば、やんばるの奥深い森を南北に縦貫する総延長35.5kmの林道で、やんばる環境保護団体の猛反対を押し切り、17年の歳月と46億円もの巨額を投じて建設されました。 正に、やんばる自然破壊の代名詞とも云える林道です。


大国林道入口
 林道の入口は、少し戻った所にありました。 入口はマングース北上防止柵で固く閉鎖されており、通る時だけ扉を開けて通行するシステムのようです。あたかも、他人の敷地や米軍基地にでも侵入するような緊張感が走ります。 ましてや、柵の向こうではヤンバルクイナが走りまわり、ノグチゲラもたくさん飛び回っていると思っただけでも「ちむどんどん」(沖縄弁で心臓ばくばく)です。




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