「やんばるクイナ」に出会う旅   (プロローグ:やんばるクイナ出現)
 那覇市の南、豊見城市内の用水路で「やんばるクイナ」を見かけました。 そのことを周囲の人たちに報告するなり、「沖縄南部に生息する筈がない!」、「それは、にせクイナに違いない。」、「あたなは、騙されている。」など、心ない返答ばかり。運転代行のおっさんに至っては、大笑いした揚句、曲がり角を間違える始末に発展。・・・なんと夢のない人たちばかりなのでしょう。

 確かに「ヤンバルクイナ」は沖縄本島北部「山原(やんばる)の森」にしか生息しない貴重な鳥です。 琉球新報、沖縄タイムズ各社は2012年5月18日、国頭(くにがみ)郡東村(ひがしそん)高江にて親子の姿を10年ぶりに確認できたことを報道していました。[報道記事]


ヤンバルクイナ  ツル目クイナ科  学名:Gallirallus okinawae
「ヤンバルクイナ」
 ノグチゲラとともに沖縄本島北部の山地、「ヤンバルの森」にしか生息 していない貴重な鳥。
 頭部は黒く、目の下から後方へ白線が出る。虹彩と嘴、足は赤い。体下面は白黒の縞模様。


 東村といえば、プロゴルファー宮里藍の出身地です。他にも慶佐次(げさし)湾のヒルギ林や、毎年3月に開催される東村市民の森でのつつじ祭りが有名です。位置的には辺野古の北東で、東村中心部までは那覇から車でおよそ100分だそうですが、ヤンバルクイナに会うまでは、まだまだ北上する必要があります。

 「ヤンバルクイナ」の減少は、ハブ駆除のためインドから輸入したマングースが原因とされています。 東大の先生のお墨付きで期待を大きく背負ったマングースでしたが、結果は肝心のハブは食べず、ニワトリやアヒル、野鳥などが大好物だったという皮肉な結果に終わったようです。 一方、マングースもかわいそうで、国がその撲滅作戦に乗り出しているということです。

 さて、豊見城市内の「やんばるクイナ」ですが、前回見かけた用水路付近をもしやと思い丹念に再探索すること小一時間・・・い・ま・し・た。 前に見た鳥と同じ鳥です。 用水路の中には多くの魚が泳いでいます。今が産卵期なのか、水路のあちらこちらで追っかけあいをやっています。ここは餌が豊富で、猫も近づくことの出来ないどちらかと言えば穴場的環境にも思えます。

 近くには、通称「三角池」とよばれる遊水池があって、サギや多くのカモ類が飛来するところです。環境省レッドリストにて絶滅危惧IA類にも分類されるクロツラヘラサギの姿もみかけます。そこには、野鳥たちの説明板があって、その末尾に刺激的で気になる記述が・・・。


バン(鷭)  ツル目クイナ科  学名:Gallinula chloropus
「バン(鷭)」
 全体は黒で、嘴(くちばし)の赤と尾部の白色はんが目立つ。丈夫な足を持ち草の間を巧みにあるく。
 沖縄県内では用水路や川辺でよくみられる。
ヤンバルクイナと似ているが、違う点は飛べる事。


 このシチュエーションにおいて、これ程までに的確で挑戦的な説明板に出会えるのも珍しいことです。「野良猫を西表山猫と取り違えているよ。」と言わんばかりです。 こうまで言われたら、沖縄北部の山原(やんばる)まで出向き、本物の「ヤンバルクイナ」に会って違いを確かめる以外にありません。




プロローグ(この場所) 前篇へ続く ついでに、他の紀行文や探訪記へも是非どうぞ!