【5月】 東京荒川 雑草だより | (荒川土手の植物コロニー) |
5月になるとタンポポの黄色い花は一斉に綿毛となり、代わりにシロツメクサの白い花が野球グランドを覆います。荒川土手の法面(のりめん)を覆う雑草も様相が変わり、スイバやギシギシ、ハルジオン、アカツメクサ、名前の知らないイネ科の植物など、背の高い雑草が支配を強めてきます。
スイバ(酸い葉・蓚)とギシギシはタデ科スイバ属の同じ仲間で、容姿もよく似ています。しかしながら、縄張りはしっかり分かれているようで、違う場所に群生します。穂や茎に赤みがあるのがスイバで、茎をかじると酸っぱい味がします。この酸っぱさの基は蓚(シュウ)酸で、「蓚」(しゅう)いう字は、まさにスイバを意味します。
一方、ギシギシは変な名前で由来もさっぱり想像できません。当てはまる漢字もないのが不思議です。アブラムシが好きなのがギシギシで、ギシギシアブラムシと云う専用のアブラムシが存在するぐらいです。
アブラムシは好き嫌いがはっきりしていて、寄生する植物が決まっています(寄主植物特異性)。辛味は苦手だそうで、唐辛子を泡盛に漬け込んだ沖縄の調味料「コーレーグース」を吹き掛ければたちまちいなくなるそうです。
しかしながら、アブラムシは可愛いテントウムシの大好きな餌なので、完全に駆除すべきかどうか悩みます。
テントウムシは種類が多く、アブラムシを食べる奴、うどんこ病菌を食べる奴、そしてジャガイモの葉が好きな奴など多様性に富んでます。いずれも目立ちやすい黄色やオレンジの色なのですが、食べても苦くて不味(まず)いらしく、鳥に襲われることはないようです。
土手の様子に話を戻し、背の高い雑草に囲まれながらも他を寄せ付けることなく黄色い花を咲かせているのがジシバリ(地縛)で、タンポポが終わるころに咲き始めます。植物には縄張りを維持するための防御機能がありますが、その一つが相手の嫌うアレロパシー物質の放出で、きっと地面の下では生存を掛けた防衛戦があちらこちらで繰り広げられているのだろうと思います。
頑強な雑草に立ち向かっているのはツキミソウ(月見草)も同様で、周囲をスイバやヨモギに囲まれながらも自分の陣地をしっかり守っています。
【荒川土手の植物コロニー】 | |||
スイバ(酸い葉) |
ギシギシ |
アカツメクサ(赤詰草) |
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チガヤ(千萱) |
ツキミソウ(月見草) |
スズメノチャヒキ(雀の茶挽) |
前編 | 中編 | 後編 |
(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
ついでに、他の「沖縄花だより」や「紀行・探訪記」、「真樹のなかゆくい」へも、是非訪づれてください。