【8月】 沖縄花だより (紫雲木:前編)



 次は「紫雲木」。 世界三大花木に挙げられるほど名の通った樹木のようですが、沖縄ではあまり聞いたことがありません。インターネットで調べてみれば、那覇市立与儀小学校の裏門に植えられていることが分りました。与儀小学校といえば、寒緋桜(カンヒザクラ)或いは「デイゴ」咲く与儀公園の近くです。那覇警察署も近くにあって、駐車違反などでお世話になった人もいるかと思います。


与儀小学校(裏門)



神原中学校(正門)

 さっそく裏門付近をうろうろしますが、傍目(はため)には単なる不審者にしか見えません。そこを耐え、少しは児童の保護者らしく振舞いながらもキョロキョロすれば・・・ありました。 しかし、ようやくの思いで見つけた紫雲木は、ほとんど枯れた状態です。しかも枝の先に僅かに残った葉には手も届かず、紫雲木がどうかの確証も、結局得られずじまいに終わってしまいました。

 与儀小学校の少し先には神原中学校があって、ここは知る人ぞ知る花木の宝庫です。校門入り口には、約40メートルにわたって艶やかなピンクの花咲くトックリキワタの並木があり、11月の花便りにはメインとして取り上げることになると思います。

 「紫雲木」と同じ世界三大花木である「火焔木」の真っ赤な花も、4月になれば、ひめゆり通り沿いに見られる筈です。なぜか奥武山公園には、今の時期に満開となった木が一本だけあったので、代わりにそちらを紹介します。[奥武山公園の火焔木]

 中学校の裏口に廻ってみれば、ゴールデンシャワーの黄色い花が咲いていました。「御用の無い方は、校内への立ち入りをご遠慮ください。」の看板を横目で見ながら、「花を見学する用がある。」などと勝手な言い訳を頭の中で繰り返しながら、ちょっとだけ中に入って写真を撮らせて貰いました。


 グランドでは中学校の野球部が投球練習をしています。間の取り方から腕の振りの細かいところまで、ついつい口を出したくなってしまいますが、応援する方が監督以上に口を出し、解説者以上に熱弁を振うのが野球の一番楽しいところです。野球のルールやサインは簡単ではなく、この子らもきっと頭の賢(かしこ)い子たちであると思います。

 紫雲木とだいぶ話が遠ざかってしまいましたが、これで終わる訳には行きません。嘉手納ロータリーまで行けば、紫雲木の大木があると聞いています。「ではいつ行くか。今でしょ!」という訳で那覇バスターミナルまで戻り、11:10発、28系統読谷行きのバスに飛び乗ります。


 嘉手納役場前バス停には12:19に到着。敢(あえ)て一個手前のバス停で降り、歩いてロータリーに向かうことにしました。紫雲木の大木が交番前にあることは分っていて、禁じ手のストリートビューで確認済み。最近のインターネットの情報量は半端でなく、元CIA職員スノーデン氏ならずとも、世界中の道路沿いの景色が自宅で簡単に手に入る現実には、素晴らしさを超えて恐ろしささえ感じます。[ストリートビュー]

 はたして嘉手納警察署大通交番までやって来れば、青々とした紫雲木の大木が交差点の角に大きな枝を広げていました。紫雲木であるという動かぬ証拠は手前の案内板、葉っぱの形を見ても間違いありません。しかし、開花期は4月から7月とあって花の姿はありません。

 沖縄での紫雲木開花目撃情報は5月上旬に集中していて、完全に時期を外している模様です。時期を外した紫雲木を求める自分の姿は、老いた母親に食べさせてあげたいと冬に竹の子を探し歩く「孟宗の孝行話」と被ります。

 せっかく嘉手納まで出かけて来たので、すこし戻って北谷に寄ることにします。ここに来る途中の車窓で、ラーメン「もとなり」の看板が見えたのを見逃してはいませんでした。帰りのバスを桑野でおりれば、目指すお店は広い道路を挟んでちょうど反対側です。


嘉手納の紫雲木



らーめん「もとなり」

 お店に入ってみれば、「写真撮影はさめないうちに・・・」の小さな額がありました。まさしくおっしゃるとおり、この額は、どの「もとなり」にも置かれています。手書きで描かれた麒麟端麗<生>のメニューも、手の込んだ圧巻物です。注文したのはつけ麺。極太のがっつり麺で、浅黒でこんにゃくにも似た色つやがあり、歯ざわりもっちりでいい味出してます。つけ汁は濃厚で、豚骨とろとろのようでいて風味は魚介、単純ではない不思議な味を醸し出しています。匂いが強い筈のニラも、濃厚だしと相性よく噛み合っていました。




鳳凰編 紫雲木:前編(この場所) 紫雲木:後編

(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
ついでに、他の「沖縄花だより」「紀行・探訪記」「真樹のなかゆくい」へも、是非訪づれてください。