【5月】 沖縄花だより | (後編:伊江島ゆりまつり) | |
ようやく米軍補助飛行場に着きました。滑走路の端から反対側を見渡すと、地平線が見えるような広大な景色です。滑走路を真っ直ぐに自転車で横切れば、遥かに続くアリゾナの砂漠をバイクで駆け抜けているような錯覚を覚えます。先ほどゆっくり追い抜いて行った軽トラックの後ろ姿もまだ遠くに残っています。 これで真後ろから夕日でも射してこよう物なら、まさに時間が止まったと感ずる瞬間で、夕陽のガンマン(古っ!)にでも扮してしまうところでした。[補助飛行場] 心地良い五月の風を浴びながら滑走路に沿って自転車を漕いでいくと、海の見渡せる崖の上にやって来ました。 ここが湧出(わじー)で、この島の絶景ポイントの一つです。展望台に立つと、遥か遠くまで続く崖の下には、沖縄に長く住んでいる人でさえ息を飲むほど美しい、透き通ったアクアブルーの海が広がっています。[湧出(わじー)] この展望台の真下には湧き水があって、伊江島名産の伊江ソーダは、この澄んだ湧水で作られます。グリーンマース(シークァーサー+塩)、ピンクドラゴン(ドラゴンフルーツ)、ブラックコーラ(黒糖)、ホワイトソーダ(砂糖)の4種類が販売されていて、好きな子に自分の思いを「いえそーだ」という縁起もの。特にピンクのソーダは、コクリングスペシャルというサブタイトルまでついている告白飲料で、バレンタインデーのチョコレートに添えて送れば抜群の効果を発揮すること間違いありません。そして男の子からのお返しは、緑色のグリーンマースで決まりです。[いえそーだ] すぐ横には天然塩製造の作業場があって、プレハブの壁には手描きで大きく「荒波」と書かれています。去年まではひらがなで、「わじーの塩」と書かれていました。 この塩は、付近の海から海水をくみ上げて、天日でゆっくり自然乾燥させるため、結晶の粒が非常に大きく、いかにも自然の恵みをとことん享受したミネラルたっぷりの天然塩という感じです。一粒手にとって舐めてみれば、きっと大自然に抱かれたやさしい味がすると思います。[わじーの塩] |
米軍補助飛行場 |
湧出(わじー) |
わじーの塩 |
「わじー」を後にして、さらに島を時計回りにめぐっていくと、ようやく当初目的のリリーフィールド公園に着きました。あたり一面、テッポウユリの白いじゅうたんです。花の美しさはさることながら、球根を植えるのが大変だったろうとの思いが先に立ちました。きっと地元の小学生も駆り出され、一生懸命植えたのだと思います。こう言ったイベントは、見る人よりも企画したり参加したりする側の方が数倍楽しいと思います。公園の一角には、色とりどりのユリを集めた世界のゆり花壇もあって、単調な白のじゅうたんにアクセントをつけています。[リリーフィールド公園] 公園は海岸段丘のなかにあり、その段丘崖を見渡すと黄色い花がところどころを覆っています。これは「ハママンネングサ」という植物で、最新の環境省レッドリスト(第4次レッドリスト)では準絶滅危惧種(絶滅危惧に移行する可能性のある種)に分類されています。岩陰にたくさん生えているからといって、むやみに踏み付けたりしてはいけない草のようです。[ハママンネングサ] 可憐なゆりの花を堪能した後は、島を一周してもと来た伊江港に戻ります。途中には、真っ白な砂浜の続く伊江ビーチがあり、本島に負けることのないリゾートホテルもここにはあります。駐車場で車の掃除をしているお姉さんがいたので、「なかでコーヒーは飲めますか?」と訪ねれば、「どうぞ!どうぞ!」というわけで仕事の手を休め、ロビーまで案内してくれるサービスぶりでした。[伊江ビーチとリゾートホテル] 帰りの船は14:00発。4時間30分の短い滞在でしたが、お天気にも恵まれ豊かな時間を過ごすことが出来ました。伊江島は、観光だけでなく地元産業の育成にもかなり力を注いでいるようで、伊江ソーダや天然塩以外にも、江島小麦、黒糖シロップ、伊江牛を使ったビーフジャーキー、伊江島産サトウキビ100%のラム酒など、優れた名品を世に送り出している活気溢れる島でした。 島のシンボルである城山(タッチュー)の周りを探索する時間はありませんでしたが、これは次回の楽しみに取っておこうと思います。 |
リリーフィールド公園 |
ハママンネングサ |
前篇に戻る | 後篇(この場所) |
(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。) ついでに、他の「沖縄花だより」や「紀行・探訪記」、「真樹のなかゆくい」へも、是非訪づれてください。 |