【5月】 沖縄花だより (前編:伊江島ゆりまつり)



 沖縄の5月は、テッポウユリが満開になる季節です。しかし今年はユリの開花が早く、伊江島リリーフィールド公園のユリの花も、5月を待たずに咲き終えてしまいそうな気配です。これは大変、さっそくゴールデンウィーク前半の4月27日に慌てて出かけることになりました。

 高速を飛ばして本部港には9時前に到着、この連休は2隻のフェリーが1時間おきに伊江島を往復しています。伊江島は美ら海水族館の真正面に見える島で本部港からフェリーで約30分、島の形や特産品からピーナッツアイランドともよばれています。しかしながら本部港までが遠く、車で高速道路を使っても那覇空港から本部港まで2時間弱、一般の路線バスを乗り継いで行こうものなら日が暮れてしまいます。

 そういった中で、車を持っていない人への朗報は今年3月に運行開始したばかりの「やんばる急行バス」。運行本数は一日6往復で、県庁北口8:40に乗車すれば本部港に10:33に到着し、11:00のフェリーに接続します。乗車賃も1,750円と格安です。

 このバスに乗って、美ら海水族館に行けるのは当たり前、さらには伊平屋島・伊是名島に渡る船の出る運天港まで直通で行けてしまう優れものです。運行するのは貸切バス専業だった沖縄中央観光で、車両も観光バスを転用したハイデッカー車。赤字で廃止にならないよう、みんなで応援お願いします。[やんばる急行]

 伊江港に行くフェリー「いえしま」は、ほとんど豪華客船のような容姿です。甲板には5月の爽やかな風が吹いていて、海もベタ凪、ついついウトウトとした贅沢な時間を過ごしてしまいました。島に近づくと、島のシンボルである城山(タッチュー)がどんどん迫ってきます。そして伊江島の玄関口である伊江港は、スペインを思わせる立派な赤レンガつくりの建物で、そうとう年間予算の豊富な村に違いありません。[伊江島上陸]



本部港

伊江島接近中

伊江港


 港に着いたらレンタルサイクル店に直行です。伊江島は比較的平坦で、今日のようなのどかな日和は自転車に限ります。島を時計回りに走ると、海沿いの畑にはタバコの葉が青々と茂っています。ところどころにピンクの花も咲いていましたが、葉を大きく育てるために、これらの花はすべて摘み取られてしまいます。伊江島は、県内有数の葉タバコ生産地でもあって、収穫したタバコの葉は日本たばこ産業株式会社(JT)がすべて買い取ってくれることになっています。しかし、たばこの需要が減少していることに加え、海外調達シフトの影響で買取価格も抑えられ、栽培農家のご苦労も大変なもののようです。[タバコ畑]

 たばこ畑を抜けて目指すはアメリカ海兵隊の補助飛行場。米軍の占有地でありながら塀も鉄条網もなく、地元の住民も自由に行き来できるところです。周辺には黙認耕作地という耳慣れない畑もあり、ここは米との複雑な歴史が刻みこまれたエリアに違いありません。途中には小さな牛舎があって、島の特産である黒毛和牛がのんびり干し草を食(は)む姿が見えました。

 牛舎を覗けば、今年生まれたばかりの仔牛たちが、母親に負けじとばかり一生懸命干草を食べています。耳には個体識別番号がつけられていて、いずれも由緒正しい血統書付きの牛たちだとおもいます。伊江島は、黒毛和牛の仔牛生産拠点としての評価が高く、ここにいる仔牛たちもまもなく全国各地に出荷され、そこで飼育されて松阪牛や米沢牛のような高級ブランド牛になるのだと思います。[伊江牛] 

 民家の庭先には月桃(げっとう)が植えられていて、この時期は、たくさんの花を咲かせていました。 餅粉をこねて月桃の葉に包んで蒸した鬼餅(ムーチー)は、旧暦12月8日に健康・長寿を祈願して食べられる縁起物ですが、その独特の香りは西洋的なハーブの匂いです。月桃のエキスには、防虫、防カビ、抗菌作用のほか、保湿効果、消臭効果、皮膚の炎症を抑える効果があると云う事で、石鹸や高級化粧水にも利用される万能植物なのです。[月桃の花]

 その周辺の畑では、朝顔によく似た薄紫の花が真っ盛り。葉や茎の形から推測すると恐らく紅芋ではないかと思います。紅芋タルトはよく知っていますが、畑に植えられている様子を見たのは初めてです。ところで、紅芋タルトのCMと云えば着ぐるみを着たガレッジセール(ゴリ&川田)のコマーシャルがメジャーですが、個人的には元気溢れる沖縄のご当地アイドル!らぐぅんの「紅いもタルトのうた」の方が可愛くって大好きです。[ご当地アイドル!「らぐぅん」(1'37"猫が横切ります。)]



たばこ畑

月桃の花

紅芋の花/「らぐぅん」



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(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
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