【3月】 沖縄花だより (首里の花さがし:前編)



 昨日の雷混じりの天気から、今日は一転して晴れ、気温も朝から20度を超えています。今頃東京は桜満開。それに対抗して今日は、首里まで出かけて3月の花探しでもしようと思います。 外に出ると心地良い風が吹いていて、「うりずん」という言葉の意味を実感できる季節になりました。軽く羽織った薄手のジャンパーも脱ぎ捨てて出発です。

 家を出たのは14:00、首里にはモノレールで向かうことにしました。起きたのが遅かったせいで、朝から何も食べていません。首里駅に着いたら、とりあえず「首里そば」に直行します。「首里そば」にはこれまで何度と無く訪れましたが、満員であったり定休日であったりと、なかなか入ることが出来ませんでした。 それが今日はすんなりセーフ、客も1人しかいません。

 とりあえず沖縄そば(中)500円を注文、スープは丁寧に灰汁(あく)をとったカツオ出汁(だし)。麺は跳ね返すほどの弾力を持った木灰仕込みです。そしてトッピングとして添えられた白しょうがが、爽やかな味わいを演出します。さすがに首里の人気店と言うだけあって、基本のしっかりした沖縄そばです。[首里そば]

 お腹が一杯になったところで、首里城内の花探索を開始します。しかしこの時期は意外と花の姿はありません。そう言われてみれば、山に生えているのはイタジイやガジュマル、そしてシダ類ばかりで、野や山が花で覆われていたという記憶はありません。沖縄は、一年中お花の咲く南国の楽園だと思っていましたが、どうやらこれは脳細胞に刷り込まれた幻想だったようです。

 公園の裏口、木曳門(こびきもん)で迎えてくれたのは、人知れずひっそりと咲くキキョウランの花でした。さらに京の内に入っていくと、鬱蒼(うっそう)としたガジュマルの木の陰で、あちらこちらに可憐な花を咲かせています。



木曳門と「キキョウラン」

京の内、カジュマルの森

「キキョウラン」


 京の内から奉神門(ほうしんもん)の横を通って正面広場(下之御庭:しちゃぬうなー)に出てくると、ちょうど入場券売り場の反対側に首里森御嶽(すいむいうたき)があります。この御嶽(うたき)は、琉球開闢(かいびゃく)の神が造った聖地とされ、知る人ぞ知る最上級のパワースポットです。観光客のほとんどは、まっすぐ有料の正殿に向かいますが、本当は無料の首里森御嶽の方がご利益(りやく)があると思います。

 広場から、一般の観光客とは逆向きに、広福門(こうふくもん)、漏刻門(ろうこくもん)、瑞泉門(ずいせんもん)と戻ります。瑞泉門に来た時は、必ず龍樋(りゅうひ)の竜に挨拶することにしています。この竜の彫刻こそ、首里城で唯一1523年当時のもので、首里森御嶽とならんでご利益があると信じています。

 そこから久慶門(きゅうけいもん)をくぐり、龍潭池(りゅうたんいけ)に向かいます。途中で後ろを振り返れば、首里城の湾曲した城壁を遠くまで見通すことができ、あたらめて首里城の美しさに魅了させられます。

 龍潭池では、バリケンのかわいい雛に出会うことができました。写真を撮ろうとしても、ちっともじっとしていてくれません。無理に雛に接近すれば、こんどは親鳥がガードに入ってきます。鳥の母性本能はとても強くて、野良猫も簡単には近づけません。

 3月の花だよりの筈が、いつの間にか動物だよりになってしまいました。龍潭池には、ダイサギの姿もありました。沖縄のダイサギは典型的な冬の鳥で、こういった凛々(りり)しい姿が見られるのもそろそろ最後だと思います。



龍潭池のダイサギ

龍潭池のバリケン

玉那覇味噌醤油工場横の路地



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(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
ついでに、他の「沖縄花だより」「紀行・探訪記」「真樹のなかゆくい」へも、是非訪づれてください。