【7月】 沖縄花だより (首里のサガリバナ)



 今日も暑かった一日が終わり、お勤めの皆様ご苦労さまでした。沖縄の夕日ももうすぐ沈もうとしています。夏至も過ぎ、これからは徐々に日も短くなって行きますが、日の入り時刻は7月始めまで遅い状態が続きます。日が落ちたらとりあえず生ビール、楽しい楽しい夏の夜が始まります。

 沖縄で夏の夜といえば「サガリバナ」、夜から咲き始め、朝には散ってしまうという一夜限りの儚(はかな)い花です。「はかない」は文字どおり人の夢、明け方に散った花が川面を流れる風景は幻想的で、お金と時間が許せば西表島ナーラ滝へのトレッキングを兼ねた「ナーラ川カヌーツアー」がお勧めです。 しかし、西表島まで行けない人には首里でのナイトツアーを紹介します。サガリバナの満開時刻は夜9時頃、首里城ライトアップは24時までなので、この辺を考慮しながら「首里サガリバナ鑑賞ツアー」を決行することにしました。



沖縄の日暮れ



首里城(ライトアップ)

 今日は6月27日木曜日、サガリバナを見る前に腹ごしらえが必要です。最初に向かうのは首里で有名なラーメン店「白虎」、そのお店は首里石嶺町にあるショッピングストア「首里りうぼう」の少し先にありました。この期間は「らぁ麺ふぇすた2013」(23店共催ラーメン店スタンプラリー)第一陣をやっていて、スタンプ収集もひとつの目的です。

 注文したのは「辛味噌朱雀つけ麺」850円、ピリッとした辛さの中にも味わい溢れる一品でした。しかしながら頭の中は、お目当てのサガリバナが咲いているだろうかという不安が先に立ち、ラーメンの美味しさを評論している余裕などありません。店内には大きな親子連れの虎の絵が飾られていて、ここは、もしかしたらタイガースファンのお店なのかしら?などと余計なことを考えながら、美味しく頂きました。[麺屋 白虎]

 お腹がいっぱいになったところで、龍潭(りゅうたん)通りを通って首里城を半周します。龍潭池の畔(ほとり)を通るとライトアップされた首里城が、まるで雲の上に浮ぶ龍のような姿を見せてくれます。せっかくなので車を止めて写真撮影。足元には沢山の子猫が寄ってきます。尾道(広島県)の裏路地に集まる猫は絵になりますが、沖縄はどこへ行っても猫だらけで、さすがにちょっと多すぎます。昼間はのんびり動かないミドリガメも夜になると信じられないくらい活発に走り廻っています。


 瑞泉酒造の表通りまでやってきました。先週の日曜の昼に通った時、数珠のように垂れ下がる何本もの蕾を見て、これは何だろうと不思議に思っていた矢先、石垣島サガリバナ見学ツアーに掲載されていた花の写真を見てピンとくるものがありました。[サガリバナの蕾]

 時計の針は21:00、はたして車のライトの先には、何やらボーと白い花の姿が浮び上がっています。駆け足で近寄ってみれば、見たいと思っていたサガリバナそのものです。辺(あた)りは、なんともいえない花の芳香に囲まれ、花の並木はずっと奥まで続いています。周辺に街灯はなく真っ暗で、民家の明かりと自動販売機の蛍光灯が頼りです。色は白が基調のようですが、ピンクがかった花もありました。

 花に気をとられていると、足元で「ウォン」と小さく吠える犬の声がします。よく見れば、近所の奥さんがうずくまりながら犬の首を撫でていて、びっくりです。犬は中型の白い犬、ブラシで梳(と)いた犬の毛玉はサガリバナそっくりで二度びっくり。結局この奥さんとは、しばらく世間話をすることになりました。小禄からサガリバナを訪ねて来たことを話せば、わざわざここまで来なくとも県庁近くにも咲いているらしいとのこと。 「え!本当ですか?」と云う訳で、すぐさま県庁に向かい新真実を探ることになりました。

 途中に通った国際通りはまだ賑(にぎ)やかですが、夜の夜中の県庁付近はさすがにひっそりしています。今年から新しくなった那覇市役所との間にある小さな公園近くを探してみれば、街路灯に浮ぶ白い花が・・・見えました。偶然居合わせた通行人も、珍しそうに写真を撮っていきます。この付近はホウオウボク(鳳凰木)が綺麗に咲くところですが、風に揺れるサガリバナまであったとは、まったく知る由もありません。



花火のようなサガリバナ

首里のサガリバナ

県庁横のサガリバナ


 7月6日、例年より半月早く関東甲信越の梅雨も明けました。 今年は太平洋高気圧にチベット高気圧まで重なって、さっそく東京大手町では35度を超えるの猛暑日を記録、沖縄の南東海上には台風7号も発生し、今年もいつも通りの暑い夏が始まりました。




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(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
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