東京下町 樹木探索 「ヒイラギ」(柊)の異形葉性[印刷用]
和名:ヒイラギ(柊)
分類:モクセイ科/モクセイ属
学名:Osmanthus heterophyllus

 11月に入ってからも気温の高い日が続き、立冬の翌日には10月上旬並みの22.9度を記録。旧暦の5月(皐月)頃に咲く筈のサツキツツジもあちらこちらで開花していて、最近の異常気象には、花木(かぼく)すら困惑している模様です。

 こんな気候でも、いつもの時期にきちんと咲いていたのは「ヒイラギ」(柊)の花。一般には余り注目して頂けない花なのですが、同じモクセイ科モクセイ属のギンモクセイ(銀木犀)と、白い花が良く似ています。ふと葉を見れば、ヒイラギ特有の鋭い棘(とげ)がありません。


DNAのメチル化
 (写真は、ウィキペディアから引用)


ヒイラギの葉(異形葉性)

 これは「異形葉性」(いけいようせい)と云い、一本の木に異なる形の葉が付く現象です。 ヒイラギの場合、動物の手の届かない高い枝の葉には棘(とげ)が少ないと云う噂ですが、スペインの研究チームは、「動物による捕食と棘(とげ)の有無、およびDNAのメチル化に関連性が見つかった。」と報告しています。

 メチル化とは、さまざまな分子にメチル基(CH3)が結合する現象のこと。DNAがメチル化すると、結合した部分の遺伝情報が読み出されなくなり、ヒイラギで例えれば、棘(とげ)の無い葉ができるという事です。

 これは遺伝子の複製ミスや変異ではなく、必要に応じて一部の遺伝情報を不活化させる後天的な成長の仕組みでした。

 あらためて隣にあるヒイラギを見て見れば、こちらは棘だらけ、しかも虫に食べられた痕(あと)が沢山残っています。

 この犯人は、間違いなく「ヘリグロテントウノミハムシ」という舌を噛みそうな草食の虫。この害虫は、アブラムシを食べてくれる黒地に赤い二つ星の「ナミテントウムシ」にそっくりで、簡単に騙(だま)されてはいけません。

 この虫は、結構大量に発生していて被害報告が絶えません。冬の間は木から地面に下りてきて、落ち葉の中で越冬すると云われていますので、まめに落ち葉の掃除をすれば、ずいぶん被害が少なくなると云う事です。





(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
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